#judomontreal 2019 #60kg #final の高藤選手の内股を読みとく

Judo Montreal 2019 | U60kg Final

2019 グランプリ・モントリール大会の60kg級決勝.グランプリ大会ではあるが,現在(2019年7月6日時点)世界ランキング1位のMshvidobadze選手と高藤選手の試合は非常にレベルが高く,一瞬を捉えた高藤選手の内股は専門家がみても唸るものであったと思う.その内容について少し記載したい.

流すように見ていると,Mshvidobadze選手が簡単に投げられたかのように感じた方も多いだろう.普段よりも受けが軽く(ディフェンスが甘い?),簡単に飛んだような感じだ.しかしながら,映像をよく観ると,高藤選手の内股のレベルの高さがわかる.Mshvidobadze選手の攻めようと前に出る力を利用した素晴らしい内股だった.そこまでの流れから,相手の行動を予測し,タイミングと身体操作が完璧だった.高藤選手は大きな力を使わずに相手を大きく回転させることができた.小さな力でも一本を取ることができる.まさに,柔道の醍醐味である.映像の1分40秒あたりから観ていただきたいが,以下の攻防があった.

先に情報として,高藤選手は左組,Mshvidobadze選手は右組なのでケンカ四つという状態になる.

映像時間 1分50秒あたりで両者が引き手を握る.左組の高藤選手でいえば右手,右組のMshvidobadze選手でいえば左手である.引き手を握った瞬間にMshvidobadze選手は背中を持ちにくると考えられたが,高藤選手の前方向にステップして,前技のフェイントをかける.前技というのは高藤選手からみて前方向に投げる技のことをいう.そのフェイントの後に後ろ技の小外掛のフェイントをかける.フェイントといっても小外掛のフェイントは大きな動作で,高藤選手を大きく反応させることを目的としている.そして,Mshvidobadze選手はその後に再度前技のフェイントを入れる(この時点で1分56-57秒あたり).前方向と後ろ方向の両方に意識させることで,的を絞らせないようにしている.前後方向に意識がいくと,どちらとも100%の防御(力)を発揮することは難しい.Mshvidobadze選手は,そういう状況を作った.そこで,強い技を狙い,釣り手を前襟から背中側に持ちかえながら,内股(もしくは腰にのせるような技)を掛けにいった.高藤選手はこの掛けを予測し,相手の掛けようとする脚より先に脚を出し,相手の力を利用して内股を仕掛けた.タイミングも完璧で,相手も気付いた時には天井をみていただろう.高藤選手の「相手の意思決定・行動を予測する能力」,「タイミングをとる能力」,「身体操作(身体の使い方)」が重なり,高いパフォーマンスをみせた.専門家がみても唸る内股だったと感じている.このような素晴らしい技能が観る方々に伝わると,柔道はもっと面白くなると思う.